ハッシュハッシュ・イレイザー

「松永君!」

 真理の呼び止める声に反応し、優介は後ろを振り向いた。

「真理……」

 意表を突かれた優介は眩しそうに目を細め、息をついて走って来る真理を見つめていた。

「観覧車乗っていたみたいだけど、大丈夫?」

 真理の心配する目は優介の心に素直に届き、少し綻びを見せた。

「ああ、大丈夫さ」

「でも、なんだか元気がない」

「うん、ちょっとね」

 言いたくなさそうにする優介の気持ちを察し、その後、真理はもじもじとしてしまった。

「真理が気にすることはないよ。でもいきなり止まった時は、正直怖かったかな」

 素直に気持ちを吐露する優介は少し照れくさかったのか、誤魔化すようにはにかんでいた。

「一緒に乗ってた柳井さんは相当ショック強かったみたいだね」

「えっ、ああ、そうかもね。だけど俺もとばっちりみたいなものだから」

「とばっちり?」

「柳井の友達が俺の友達を巻き込んで、無理やり二人で観覧車に乗せられたんだ。はめられたって訳さ。それであのアクシデントだろ。なんていうのか、本当になるべき時に起こってしまったって感じだった」

「そうだったの」