ハッシュハッシュ・イレイザー

 全てが片付いた後は、平常に戻るのも早かった。

 先ほどの事はなかった事のようになり、周りの人々もすぐに忘れて各々に行動していく。

 止められていた観覧車も再び動きだした。

「やっと動いた。これで乗ってた人は安心だね」

 紫絵里は自分がそうなっていたらと考えていたのか、一番上を見上げて言った。

「中で閉じ込められていた人は、不安だっただろうね。機械が故障したと思ったかも」

 真理も同情するように答えた。

 ゆっくりと下に降りてくる観覧車が地上に到着し、ドアが開けられて人が出てくる様子を、二人は無意識に暫く見ていた。

 ほっとした表情をしている人。

 突然のハプニングに驚き、訳がわからないまま笑っている人。

 口を閉ざして、落ち込んだ顔をした人。

 その強張った顔の女性は自分たちと同じ制服を着ている。

 それは真理も紫絵里も知っている顔だった。

 瑠依──

 どちらも声には出さなかったが、はっとして彼女を見ていた。

 そして、その後に優介が続いて出てきた時、紫絵里はガツンと何かが頭に落ちてきたようにショックを受けた。

「嘘、どうして……」

 紫絵里は、衝撃のあまり顔を青ざめて立ち竦んでいた。