7
「一体、何があったんだろう。心臓発作かな」
身近で起こっている切迫した状態に、紫絵里は動転し、おろおろとしている。
「もともと、体が弱い人だったのかもね。お気の毒に」
真理は止まっている観覧車の天辺を見上げて言った。
そのゴンドラの屋根の上に、黒い羽根を持った男が、ふざけたように足をぶらりとさせ座っている。
それを真理がはっきり見た時、それは不敵な笑みを向け立ち上がり、その後さっさと上空へ飛び立っていった。
「ハイド……」
ついその男の名前が口から洩れた。
「えっ、何?」
「ううん、何でもない」
真理は慌てて、目を逸らし、俯いていた。
「なんだか、とんでもない時に出くわしたね。あの人、大丈夫だといいんだけど」
大したことがないように、紫絵里は願うつもりで言った。
「そうだね」
真理は相槌を打つように、虚しく呟いた。
真理にはわかっていた。すでにその人が命を落としていたことを。
「ここに来て、観覧車なんか乗らなければよかったのに、そうすれば……」
真理が言った後、紫絵里が続けた。
「こんなことにならなかったかもね。よっぽど体に負担がかかったのかも」
だけど、真理は違う事を考えていた。
もう少し長く生きられたのに──と。
ハイドがここに居たために起こってしまった事。
あの人は運が悪かった。
そして、公共の場で変に目立って倒れてしまうと、もっと悲惨でお気の毒過ぎる。
池に餌を投げて集まってきた鯉のように一ヶ所に集まって、スマートフォンを持ち上げていた人々。
さらし者にされたようだった。
真理は救急隊に運ばれていく犠牲者をぼんやりと目に映し、心の中で冥福を一人祈っていた。
そうするのが礼儀だといわんばかりに。
「一体、何があったんだろう。心臓発作かな」
身近で起こっている切迫した状態に、紫絵里は動転し、おろおろとしている。
「もともと、体が弱い人だったのかもね。お気の毒に」
真理は止まっている観覧車の天辺を見上げて言った。
そのゴンドラの屋根の上に、黒い羽根を持った男が、ふざけたように足をぶらりとさせ座っている。
それを真理がはっきり見た時、それは不敵な笑みを向け立ち上がり、その後さっさと上空へ飛び立っていった。
「ハイド……」
ついその男の名前が口から洩れた。
「えっ、何?」
「ううん、何でもない」
真理は慌てて、目を逸らし、俯いていた。
「なんだか、とんでもない時に出くわしたね。あの人、大丈夫だといいんだけど」
大したことがないように、紫絵里は願うつもりで言った。
「そうだね」
真理は相槌を打つように、虚しく呟いた。
真理にはわかっていた。すでにその人が命を落としていたことを。
「ここに来て、観覧車なんか乗らなければよかったのに、そうすれば……」
真理が言った後、紫絵里が続けた。
「こんなことにならなかったかもね。よっぽど体に負担がかかったのかも」
だけど、真理は違う事を考えていた。
もう少し長く生きられたのに──と。
ハイドがここに居たために起こってしまった事。
あの人は運が悪かった。
そして、公共の場で変に目立って倒れてしまうと、もっと悲惨でお気の毒過ぎる。
池に餌を投げて集まってきた鯉のように一ヶ所に集まって、スマートフォンを持ち上げていた人々。
さらし者にされたようだった。
真理は救急隊に運ばれていく犠牲者をぼんやりと目に映し、心の中で冥福を一人祈っていた。
そうするのが礼儀だといわんばかりに。



