高校入学後の浮ついた陽気な気分の中に紛れる不安は、自己顕示欲に押され気味に、ギラギラとしたものを前面に押し出していく。

 誰もが寄り添える友達を手に入れようと、波長の合うものを探し求め、隠れてアンテナを張っている。

 その運は巡り合わせた席順で決まるかもしれないし、目があった瞬間、ニコッと微笑み合って声を掛けた時に決まるかもしれない。

 この時期は友達探しのために、みんなノリがよくなりやすい。

 キャーキャーと大げさに笑い声が教室に響く。

 皆、一人ぼっちになることを恐れ、仲間を求めている。

 乗り遅れてはいけないこんな時、真理は一人おどおどとして、誰にも声を掛けられずにいた。

 それでも真理は運がよかった。

 同じように、乗り遅れて不安な目でおどおどしている人物がそこにいたからだ。

 お互いの消極的な波長がそこで合い、二人は恥ずかしげに顔を見合わせ微笑み合う。

 この人となら仲良くなれそう。

 そう思いながら真理をじっと見つめていた。

 それが、瀬良紫絵里(せらしえり)。

 メガネをかけて真面目そうに、背が低く控えめな態度が、暗さを強調。

 そして、周りに流されず、我が道を進み、人に合わせるのが苦手なタイプ。

 しかし、ニコッと微笑んだ顔は、悪くはなかった。

 メガネの奥から覗く双眸は誠実さにあふれていた。