ハッシュハッシュ・イレイザー

「そろそろ、行こうか」

「どこへ行くのよ」

「うーん、あっちの方はどうかな」

 真理が指を差した方向には大きな観覧車が、曇り空に包まれるようにどんよりしながら、こちらを見下ろしていた。

 目を凝らさないと見えないくらいノロノロと動くさまは、巨大で得体のしれない不気味さを感じる。

 その存在は目立って無視できないくらい、そこに行くのは当たり前のように思われた。

「いいけど、もしかしてアレに乗りたいの?」

「近くで見てみたいだけ」

「乗らずに、近くで見るだけ?」

「どれだけ大きいのか、傍に行ってみたくない? 離れていたら感覚つかめないでしょ」

「そういうものなのかな」

「きっと近づいたら、ものすごく大きい物だって実感するよ。そして急に恐れるの。こんな大きなものが本当にあるんだって」

「ここから見るだけでも充分大きい物だって認識できるけどな」

 紫絵里は真理のテイストが理解できないでいた。

 真理はずっと観覧車の上の方を目を凝らして見ていた。

 観覧車はのっそりとした動きで確実に動いているのが、近づくにつれよく見えてくる。

 紫絵里がその麓まで来た時、まっすぐ上を見つめることで、かなりの高さがあることに気が付いた。

 よく考えれば、ぶら下がった鳥かごのような入れ物に乗って、ゆっくりと上へと連れて行かれる。

 高い所で不安定に揺れながら、空中を彷徨うのは恐怖心をそそられる。

 それを想像すると、巨大生物みたいに、観覧車が違うものに見えてきた。