ハッシュハッシュ・イレイザー


 水族館を出た途端、ムシムシとする湿気が肌にまとわりつく。

 少し体が冷え切っていた紫絵里には、体が温められていく快適さを感じたが、それはほんの少しのことであって長く続かなかった。

 何かの変化ですぐ振り回される一喜一憂のように、気持ちの浮き沈みが体全体を通して激しくなっていた。

 外で暫く歩いていると、すぐに熱が体にこもり、汗ばみだした。

 ハンカチを手にし、軽く額を抑え、息を一息ついた。

 その隣で、真理は涼しげな顔をしている。

 白い肌が引き立つ、清楚な少女。

 見るからにすっきりとして、清涼感すら感じてしまう。

 それだけでもまたモヤモヤしていた。

「どうしたの? じろじろと私を見て」

 か細い真理の声がかわいく聞こえ、この時耳触りも悪く感じる。

「真理は暑くないの? いつも涼しそうな顔をしてるね」

「みんなと同じだよ。でも、まだ真夏って天気じゃないし、我慢できるかな」

「我慢とか、そういう問題じゃないけどさ、青白いって健康的じゃないけど、暑苦しさが顔に出ないって得だね」

「紫絵里は、暑いの? 何か冷たい物でも買いに行く? そろそろお昼だし、どこかでお弁当食べようか」

 嫌味っぽく言ってしまった事を悔やまれるくらい、真理は気にせず笑っていた。

「そうだね……」

 紫絵里はその笑顔を見るのが辛く目を逸らした。