ハッシュハッシュ・イレイザー

 人魚には美しさというイメージも含まれるし、魚の中で例えるのなら一番いい例なはずだった。

 でも真理は、気分を害するように暗く沈んでいる。

 滅多に反抗せず、受け流す真理が、この時強く嫌がっていた。

「どうして? 嫌なの?」

「だって、好きな人と結ばれない運命だから」

「えっ、それはアンデルセンの物語の中だけじゃない」

「でも、人魚ってなんかいつも悲劇的な話が多いように思う。あまりいいイメージじゃない」

「ちょっと、真理、そこまで思わなくたって。サメよりはずっといいと思うけど」

 紫絵里はバツが悪くなり、水槽に視線を移した。

 サメがゆったりと、小さな魚の群れを横切って泳いでいた。

 大人しく見えるけど、サメというだけでどこか信用置けない怖さがあり、何かのきっかけで豹変する可能性を秘めてい部分を紫絵里は見ていた。

 それは、真理が気を悪くした姿を初めて見たことに似ているようで、紫絵里は少し不安になる。

 水槽の青い世界を見つめ、水底にいるように目で冷たさを感じるが、実際、かなり温度が低い。

 先ほどから紫絵里はぞくぞくと冷えを感じていただけに、その時、思わず身震いしてしまった。