ハッシュハッシュ・イレイザー

「えっ、なんであれが私なの?」

「ほら、やっぱり嫌でしょ」

「だって、あれは可愛くないし、ほんとにどうでもいいような魚でつまんない」

 紫絵里は明らかに不満そうな顔つきになった。

 姿形もだが、そのどこにでもいる目立たないつまらなさが、自分自身を言い当てているようにも思え、痛い所を突かれたみたいに紫絵里の機嫌が悪くなった。

 真理は冷静にそれを受け止め、また質問した。

「それじゃどんな魚に例えたら、喜ぶ?」

「えっ、それは……」

 魚自体あまり可愛くないので、どれに例えられても満足いくようなものはなかった。

 質問にうんざりし、紫絵里は呆れた顔になって真理を見た。

「じゃあ、真理だったら、どんな魚に例えられたら嬉しいのよ」

 紫絵里はやり返すつもりで言った。

「私なら、サメかな。それも人を襲うような大きくて、邪悪なサメ」

「えっ、真理、一体どうしたの。サメなんて真理の雰囲気からほど遠い。自棄にならなくていいから」

 真理は水槽の中をゆったりと泳ぐサメをじっと見ていた。

 館内の照明と水槽の水の光で青く染まった真理は、紫絵里の目から見ても美しかった。