ハッシュハッシュ・イレイザー

 建物の中へ入ったとたん水の中へ潜るように、辺りは青い世界に包まれる。

 青に染まった自分の体。

 冷たくなっていく錯覚を覚える。

 空調システムが効いているせいもあるが、実際肌寒く、少し鳥肌が立った。

 ひんやりとした、冷たい海の底に紛れ込んだように、そこは神秘的な空間だった。

 小さい魚から大きな魚、種類も様々に海の生き物が泳ぎまわっている姿に、真理は暫し童心に返って素直に目で追う。

 紫絵里は後ろばかりを気にして、何度も振り返り、優介を探していた。

 真理は敢えて何も言わず、目の前の魚だけを見ていた。

「やだ、あの魚、なんだか数学の先生みたい」

「ほんとだ。そういえばあの先生、魚みたいな顔してるよね」

 知らないクラスの女の子たちの会話と、笑い声が、耳に入ってくる。

 それに注意を引かれて、紫絵里はその魚を見てしまった。

「あっ、ほんとだ。似てるかも」

 紫絵里もぼそっと呟いた。

「魚に似てるって陰で言われるのも、悲しいね」

 真理が言った。

「でも悪口ってわけじゃないし、それは感想だよね」

「だけど、本人の前では言えないんじゃないかな。やっぱり気を悪くしそう」

「でもさ、親密度が高い友達同士なら、冗談で済ませられるんじゃないかな」

「そうかな。それじゃ私が紫絵里の事を、あの小さな目の大きい魚みたいなんて言ったら、どう思う?」

 せせこまとせわしなく泳ぎ回ってる雑魚を指差した。