ハッシュハッシュ・イレイザー

「おはよう、松永君」

「おっす。瀬良。今日は雨だな」

 紫絵里に声を掛けられ、鞄からノートを取り出しながら、優介は気軽に話し出した。

 優越感と喜びに紫絵里は心満たされ、調子づいていく。

「梅雨時だもん。仕方ないね」

「こんな時期に、来週遠足だろ。絶対雨だね」

「わかんないよ。晴れ間がのぞく日だってあるし、それにその日はきっと晴れると私は断言する」

「おっ、瀬良は晴れ女か」

「うん。そうだよ」

「おっ、はっきり言うな。すごい自信。そしたら賭けしようか。俺は雨に賭ける」

「じゃあ、私は晴れね。それで、勝った場合は何があるの?」

「そうだな、ラーメンを奢られるってのはどうだ?」

「えっ? ラーメン? 私、それいらない。暑いのにラーメンなんて食べたくない」

「そうか? おいしいラーメン屋が駅前に最近できて話題になってるじゃないか。美味そうなんだけどな」

「私は、パフェがいい」

「そんなのがいいのか? 腹もち悪いぞ。それじゃ、俺が勝ったら、瀬良はラーメンを奢る。瀬良が勝ったら、俺がパフェを奢るってどうだ」

「それいい!」

「ようーし、それじゃ決まりだ」

 晴れても雨が降っても、どっちにしろ放課後、優介と一緒に過ごせるきっかけができる。

 またこれが、自分の願いに一歩近づくように思えてならなかった。

 紫絵里の願いは、優介の彼女になること。

 きっと二人っきりになったとき、それが叶う。

 できたら、ラーメンよりはパフェの方が、雰囲気がよさそうに、紫絵里は遠足の日が晴れる事を願うだろうと、一部始終を見ていた真理はそう思っていた。