ハッシュハッシュ・イレイザー

「一度目はほんの軽い気持ちで願ったんだ。松永君の隣に座ったら、こんな私でも声を掛けてくれるのかなって、好奇心だけでそうなればいいなって思っただけが、本当にそうなったからびっくりしたんだ。それからこの石に頼るようになって、もっと楽しく話せますようにって願ったら、本当にそうなったから、今度は、もう一度松永君の席の隣になれますように、って強く願ったんだ。それが叶った時、やっぱりこの石のお蔭なんだって、今ではすっかり信じてる」

「あっ……」

 真理は言葉を失ったように、混迷していた。

「どうしたの? あっ、まさか、急に惜しくなって返してとかいわないでよ」

 おどけた笑いをしながら、紫絵里は返すつもりなど全くない強い眼差しを、一瞬真理に向けた。

「えっ、そ、そんなこと言わないけど。でも、その石にはあまり頼らない方がいい。そんなのただの偶然よ」

「偶然にしても、これを持ってるとなんだか運がよくなる気持ちになるの。それに、すでに願いが叶ってるし、やっぱり石の力があるのよ」

「紫絵里、それ、本当に私が渡したの?」