ハッシュハッシュ・イレイザー

 静けさの中に、チョークが黒板にぶつかる音が小さく響く。

 そこに描かれたものは他愛もないただのハートマークだった。

 描き終わるとチョークを置いて手を軽くはたき、自分で描いたハートを見つめ紫絵里は呟く。

「私が松永君の席の隣になれたのは、真理のお蔭」

 くるっと振り返り、紫絵里は真理に笑顔を向けた。

「私のお蔭?」

 真理は頭に疑問符を乗せてきょとんとしている。

 紫絵里はクスクスと笑い、再び机に戻り、床に置いてあった鞄を取り上げて中から何かを取り出した。

「ほら、これをくれたでしょ」

 手のひらには白い塊が、パールの光沢をもって光っていた。

 その白くぼやっと光る塊が真理の瞳の中に映りこんだ。

 優しい仄かな輝きに、どこからともなく懐かしさがこみ上げてくる。

「それは……」

「願いが叶う魔法の石…… なんて言われたけど、最初は冗談だと思ってた。でもきれいだし、真理がくれたものだから、持ち歩いてたんだ。そしたらやっぱりいいことがあった。松永君の席の隣になったしさ、それで学校が楽しくなった」

「紫絵里、その石は……」