ハッシュハッシュ・イレイザー

「もういいわ。みんな、行きましょう」

 見ていた者達の方が納得いかない顔をしていた。

 それでも瑠依が踵を返して教室から出ていくと、残りの者は後をついていくしかなかった。

 瑠依にしてみれば、イタイと思っていた紫絵里の口から、自分がイタイ人と言われたことで我に返ったに違いない。

 そこまで自分が落ちぶれてしまったと、急に自尊心を傷つけられたようにショックだったのだろう。

 真理は何となくだが、瑠依の気持ちが読めていた。

 再び静けさが教室に戻ってきたところで、空気も和らいで、ほっと一息がつけた。

「真理、傍にいてくれてありがとうね。やっぱり心強かった」

「私、何もしていない」

「ううん、真理が居てくれただけで、私にも味方がいるんだって思うことで負けなかった。真理はやっぱり私の親友だ。本当にいつもありがとう」

「そんな……」

 先ほどからずっと座っていた紫絵里は椅子から立ち上がり、そして黒板の前へと進んだ。

 太陽は西に傾き、教室に弱々しい光が入り、もの悲しい寂しさを漂わせている。

 紫絵里はチョークを手にして、黒板の隅に落書きをしだした。