ハッシュハッシュ・イレイザー


 暴力は用いられなかったが、いつまでも平行線のように、紫絵里と瑠依の睨み合いは続き、お互いをけん制し合っていた。

「悔しかったら、あなたも松永君と仲良くなればいいじゃない」

 隣の席になった強み。
 紫絵里は強気だった。

「あなた、松永君と本当に親しくなったと思ってるの? ただ席が隣なだけじゃない」

「でも柳井さんが私ほど松永君と喋ってるところ見た事ないけど。話を交わす機会もないじゃない」

「瀬良さん、あなたのためにもはっきりと言っておくわ。松永君はあなたを好きじゃないわ。隣の席だから気さくに話しかけてるだけ。それを勘違いしないことね。あなたを見てるととてもイタイ人に見えて仕方がないの」

「その割には、私に嫉妬しているようにも見えるんだけど。そういう柳井さんもイタイ人だわ」

 当の本人はもちろん、瑠依の味方である友達でも、こんな言い方をされたら、益々紫絵里に腹を立てることだろう。

 案の定、傍に居た女子達の眉が吊り上がり、表情が険しくなっている。

 瑠依の肩を持ち、我慢しきれず何かを口にしかけた時、瑠依は咄嗟にそれを遮った。