ハッシュハッシュ・イレイザー

 そして、紫絵里もまた、自分の恋を邪魔される事に我慢がならないでいる。

 そこにはきれいごとでは済まされない、熾烈さはあるけれど、一人の男を巡って、自分の恋に必死になる二人の乙女心の気持ちが、ずきんと真理の心にも響いてくる。

 好きになってしまったら、それはどうしようもない。

 思いを胸に秘めておくだけで我慢できないから、辛く苦しく、そして熱く溶けて心から溢れていく。

 その強いエネルギーのせいで、人は何をしでかすかわからない。

 例え誰かが犠牲になったとしても──

 まさにこの二人は、その気持ちを持ってぶつかり合ってしまった。

 恋の威力を目の当たりにしながら、真理はこの時、誰にも知られず、自分の本当の気持ちを必死に封印していた。