ハッシュハッシュ・イレイザー

「当事者の真理、本人が語るだけじゃだめなの?」

「それじゃ真理側の話しかないじゃない。あなたにも公平じゃないと、この物語は真実にならない」
 ぴしゃりと放つ私の言葉に紫絵里は少し反応した。

「真実……」

「さあ、そろそろ、あなたの思うところを話して欲しいわ。あとはあなた次第なの。それでこの物語は語り終わるわ」

「ねぇ、もう一度真理と話をさせてくれない?」

「それはできない」

「えっ、どうして?」

「もう真理の使命は終わってるから。あなたに会う必要がないの」

「そんな。それって二度と会えないってことなの?」

 その言葉の重みに、紫絵里は泣きそうになる瞳を私に向けた。

 私は思わず微笑まずにはいられなかった。

「そうよ。だけどその言葉が出たということは……」

 私がここまで言いかけた時、紫絵里はベッドから身を乗り出して突然慌てだした。

「ちょっと、どうしたの? なぜ、消えようとしてるの?」

 私は実際消えようとしてるわけではない。

 まだ同じ場所に立って紫絵里をしっかりと見つめている。

 だけど紫絵里には私が消えていくように見えるようだ。

 すでにきょろきょろとして、私の姿を探しているところを見ると、完全に見えなくなった様子だった。