ハッシュハッシュ・イレイザー

 そうなると優介は次第に苛々し、却って開き直ってしまう。

「なんといっても俺は真理が好きだ。瀬良がどんなにわめこうと、俺を罵ろうと、俺は真理が好きな事には変わりない」

「松永君、今はちょっと抑えた方がいい」

 紫絵里の感情が高ぶっているだけに、真理は窘めた。

「真理の馬鹿、松永君の馬鹿。バカバカバカ」

 憎しみが悲しみ一色になり、無力になって行く紫絵里が哀れだった。

 だが、すでにこうなってしまった以上、真理も後には引けない思いだった。

 真理こそ、自分を貫かなければならないと覚悟を決めた。

「紫絵里、私はやっぱり裏切れないわ」

「えっ?」

 真理の言葉に紫絵里はどこかで期待をするように頭を上げた。

「おい、真理、どういうことだ。裏切れないって、紫絵里をか?」

 今度は優介が意表を突かれたように驚いた。

 真理は優介と向かい合い、真剣に見つめた。

 そこには思いつめた気持ちが込められ、瞳が強く優介を捉えていた。

 優介と相思相愛だとわかった今、真理にとってそれは何を意味するのか。

 真理もまた目に涙を浮かべ悲壮な面持ちをしていた。

「だから、裏切れないの。私は、私は……」

 その時、真理は鋭利に尖ってしまった石を強く握り、それを上に持ち上げ、思いっきり優介の心臓めがけて突き刺した。