ハッシュハッシュ・イレイザー

 紫絵里にどこかへ行こうと誘われて、マリアとの約束をほのめかしたが、決してそれは嘘ではない。

 マリアとの約束も本当の事ではある。

 それは後の話で、真理は気持ちに押されて、とにかく優介をこの静かな教室で待ちたかった。

 紫絵里には正直に話せず、申し訳ないと思いながらも、真理は優介を自分のものにしようとしていた。

『まあね。それで試験が終わった日に、俺は女神にお礼しなくっちゃいけないかも』

 優介が言っていた言葉に隠れていた真の意味。

 真理はそれを自分へのメッセージだと信じて疑わなかった。

 だから、本当に優介が、教室に入ってきたその時、真理は間違ってなかったと、素直に喜んだが、一歩一歩優介が自分に近づいて来た時、なんだか怖くも感じていた。

 胸をつんざく勢いでドキドキする。

 それに比例して血もドクドクと激しく波打つ。

 好きだという恋心。

 だが、この先の不安。

 同時の感情を持ち、この上なく全身が締め付けられたように血が騒いでいた。

「よかった。俺のメッセージがちゃんと伝わっていて」

 照れた笑みをこぼし、右手を後ろに回しながら、優介が近づいてくる。

「松永君、私、その……」

 この場に及んで真理は怖気ついた。