ハッシュハッシュ・イレイザー

「あっ、それは」

「どうしたの? 何か予定ある?」

「うん……」

 断ることに対して気まずいのか、真理は言いにくそうに紫絵里の様子を窺っていた。

 また紫絵里は癪になり苛立った。

 ダメならダメとはっきり断ればいいのに、言葉を濁しているのにも腹が立つ。

 残念というより、逆切れで不機嫌になった気持ちがくすぶる。

 紫絵里は真理に八つ当たるような不満な表情を見せた。

「そっか。それじゃ仕方がない」

「ごめんね、紫絵里。折角誘ってくれたのに」

「別にいいけど、だけど、何の予定があるの?」

 自分の誘いを断ってまで一体何があるのか。

 紫絵里はさりげなさを装い、さらりと質問したが、本当は詳しい事を教えろという強迫じみた目を向けた。

「その、あの、ちょっとマリアと用事があって」

「マリア? ああ、真理の双子のお姉さんか」

 姉妹の話ならどこかほっとするものがあった。

 もし、何か隠していて、それが優介に係わることだったらという心配もあっただけに、身内が絡んでる理由を知るや否や紫絵里の頬が弛緩した。

 それとは対象的に、真理の顔が強張っていた。

 目も視点が定まらずに瞳が揺れ動いている。

 自分の姉妹と過ごす事があまりよいことじゃなさそうに思え、紫絵里は首を傾げた。