ハッシュハッシュ・イレイザー

 教室は午前中で全てが終わった開放感に包まれ、この上なくほっとした和らいだ雰囲気が流れていた。

 皆、気が緩んで午後から遊びに行こうと計画を立てるものが一杯いる中で、紫絵里は一人席に着いて石を握ってトランス状態になっている。

 真理はそれを危惧しつつも、気にしないフリをして紫絵里に近づいた。

 不自然にならないように、試験が終わった喜びの笑顔を作り、紫絵里の肩を軽く触れた。

 紫絵里はハッとするも、真理だとわかると、瞳は挑戦するような凄みに鈍く光る。

 そして何をしてたか隠すこともなく、堂々と石を鞄の中に仕舞った。

 真理はそのことについては触れずに話しかける。

「やっと期末テストが終わったね。紫絵里はどうだった?」

「まあまあかな」

 一度真理に不信感を抱いてから、紫絵里は素直に心を開けなくなり、真理のまっすぐな笑顔を見るのが辛かった。

 真理は全く普段と変わらない。

 相変わらず色が白く、セミの声が聞こえる暑苦しい夏になっても、涼しげでいて美麗だった。

 そこにいるだけで、美少女として誰もが認めてしまうものがある。

 心の中で真理を拒絶し始めた時、それが嫌に浮きだって見えてくるのは、嫉妬のせいだとしても、今まで気が付かなかったことが滑稽だった。

 なぜ自分の方が真理よりも上の立場にいると思っていたのか。

 それは、真理が常に自分を立てて、一歩引いていた控えめな性格だからだった。