ハッシュハッシュ・イレイザー

「それで、この動詞は不定詞しか使えなくて……」

 いつしか動きが止まっている優介を不思議に思い、真理が顔を上げると、優介は見とれていたことを隠すようにぎこちなく慌てだした。

「な、なんか暑いよね」

 決して、それは気温だけじゃなく、真理を意識して気持ちが高ぶったのも原因だった。

「そ、そうね」

 あまりにも近い場所に、優介が居て、顔を合わせている事実に、真理も今更ながら気が付いた。

 意識し出した途端、頬が熱くなるのを感じていた。

 白い頬が淡いピンクに染まったその時、優介の真剣みを帯びた瞳がまっすぐ真理に向けられた。

「真理……」

「何?」

「あのさ……」

 息をするのも苦しくなるその教室の静けさは、時計の秒針の音までも呑み込み、二人のその瞬間を一瞬止めてしまった。