それは優介が、病院ですれ違った時に目に入った時の笑顔と同じものだった。

 一度見れば忘れられないくらい印象深い外見だったから、優介は常に覚えていた。

 それが例え姉のマリアだと言われても、この瞬間、目の前にその顔があれば、どっちでもいいように思えてしまう。

 真理が身近にいるのなら、真理を取るのが当たり前のように、優介はその笑顔に見とれていた。

 二人のやりとりですっかり除外されてしまった紫絵里は、本能的に危機を感じ、この流れがいいものではないと直感した。

 そして真理が自分を差し置いて、積極的に優介と話をすることが許せず、めらめらとした心の醜い炎が燃え盛った。

 それを今は必死に抑え、無理に笑顔を作った。

 何気ない顔で二人の間に入り込んでいく。