雨が降り続くピークも過ぎ、梅雨もあと少し我慢すれば、いずれ明けていく頃になっていた。

 本格的に夏を迎える七月がすぐそこまで来ていた時、同時に期末テストも待ち構えていた。

「瀬良は余裕だろ。お前、勉強できるもんな」

 英語の授業が終わった直後の休み時間、机の上に突っ伏して諦めモードの優介に言われ、紫絵里は気分よくしていた。

 席替えでいい席を取ってから恋に目覚めた乙女は、いざという時のために、勉強を怠らなかった。
 
 授業中に当てられて、自分がさっと答えられるためにも、優介が答えられない時に助け船を出せるためにも、地道な努力に励んでいた。

 その甲斐もあって、紫絵里はあまり困らずにいた。

「なんなら、一緒にテスト勉強しようか」

 得意になってしまった紫絵里の言葉に優介は一瞬黙り込む。

「…… いいや。足手まといになったら悪いし。俺は赤点さえ取らなければいいや。それくらいなら、なんとか頑張れそうだし」

 本当は一緒に勉強したかった紫絵里だったが、確かに優介が傍に居れば勉強に身が入らないのも事実だった。

 結局どっちがよかったのかわからないまま、次の授業のために、数学の教科書を取り出していた。