青い夜の日は決まって月が白く冷たく輝く。

 真珠のように美しく、いや、月の輝きの方が簡単に手に入れられないだけもっと高貴で美しい。

 透明で冷ややかな淡い光はまっすぐに心に届いて突き刺すよう。

 暗くなればなるほど、それはただ輝く。

 どんなに手をかざしても決して熱くはならない。

 さらさらとした煌めく白い粉のように、どこまでも手から零れ落ちる。

 私はそれをよく知っている。

 誰よりも詳しく──

 この月の光は誰のもの。

 それを見つめているのは私だけじゃない。

 私はそれを知ってても何も言えない。

 冷たい月の光のシャワー。

 私は一人の傍観者のように、それを味わう。

 傍で誰かが私を見ているとわかっていながら……

「呑気でいられるもんだ」

 思った通り、頭上から声が響いた。

 だけど私は無視をする。

「俺が声を掛けても、びくともしない。余程の強者だなお前は」

 バサバサとした音と共に、風が私の髪をなびかせ、それが地上に降りてきた。

 彼の背中の黒い翼が、月の光で怪しく艶を帯びていた。

 鋭い猛禽のような目つき、だがそれは力強くて美しく、見るものを魅了する。

 完璧に整った麗しい容姿で、私を優しく見ていた。