冬生は誘われたことを紅子に言わなかったらしい。
(まあ、行かなかったんだから言う必要もないか。)
彼女は他の男と食事に行っている反面、彼氏は遊ばずに恋人の帰りを待っている図は滑稽なようだが、
冬生の気持ちを考えると、希和はいたたまれなくなった。
「紅子って浜安君のことどう思ってるの?」
希和は紅子の横に立ち、髪を直している風を装いながら聞いた。
「んー?どうって、普通に、友達。希和のほうが浜安君と仲良さそうに見えるけど。」
紅子はいたずらっぽくほほ笑んだ。
笑顔を見た瞬間、過去に恋人から言われたことを思い出し、胸がずきりと痛んだ。
鏡の中の笑顔から目をそらし、希和は
「そんなこともないよ。ちょっと話したりするだけ」
とだけ返した。


