駅に向かって自転車を力いっぱいこぐ。

つめたい風が吹き付けて、ハンドルを握る手とむき出しの目の周りを刺すせいで、涙がにじむ。

あのまま夕飯にでも誘うべきだっただろうか。

今からでもメールしてみようか。

片手をポケットに伸ばし、スマホを取り出し、もう片方の手で自転車のブレーキをかけ、スピードを緩める。

このままだとザ・ながら運転。

『暇だったらラーメンとか行かない?』

希和は自転車を道の端に止めて、かじかむ手で文面を打った。

送信しようとして一度考え直す。

『何人か誘おうと思ってる』

そう付け足し、送信ボタンを押す。

スマホを手に持ったまま、希和はしばらくそこで立ち止まっていた。

(完全なる不審者だな私)

正直、返事がいつ来るかわからないのに、こんな道端に立ち止って待っているなんてアホくさい。