「もう希和いますってメールしておくね」

紅子がケータイを取り出す。

「いや、いいよ紅子。わたしもメアド持ってるから」

というかもうメアド交換なんでしてんのか貴女は。あいつも。

「えー、わたし言っておくからいいよ、手洗っておいで」

紅子がケータイをいじりながら言った。

「紅子やっぱすごいよ、一瞬で仲良くなってた」

店番の湯島加江が言う。

なんだそりゃ。

希和は何も言わずに店を離れた。もうすでに12時近い。

店番もあと一時間足らずで次のシフトの子たちが来る。

大人げないとは思いつつ、モヤモヤした気分に支配される。

紅子が冬生とメアドを交換してなければ。

他に生クリームを買いに行くといってくれる人がいれば。

そもそも修二の家の冷蔵庫が壊れなければ。

でも。

紅子の社交的さならメアド交換は当然なこと。

誰も行く人がいなければ自分が行けば解決すること。

冷蔵庫が壊れるのは仕方がないこと。