恋しちゃえよ。いい加減。

「何も聞いてなかったじゃん。」

「あれは、勧誘よけとかに使ってたの。」


車が赤信号で停まると、ふいに椿がこちらを向いた。
近づいていたから、キスしてしまいそうな程、近い。


わっわっ!


と、驚いて離れようとする私の頭をぐいっと後ろで支えられて、ますます近くなる椿と私の距離。


コツン。



とオデコがぶつかる。


もう、鼻の先が触れてしまう。





「……イヤホンなんてしなくても、俺に電話してこいよ。」



そう言って、椿の顔の角度が変わると、


唇が触れた。



「あっ。信号青だった。」



そう言ってぱっと離れると何事もなかったように椿は前を向いた。


私は唇に手を当てる。


「いっ、いっ、今!」


「キスしちゃったね。」


さらっと答える椿。


「もうっ!!信じらんないっ!」


と、怒って窓の外をみるフリをする。



だって、本当はこんな真っ赤な顔見られたくなかったんだもん。