「綺麗になったよな。」
突然言われてなんのことだか分からなくてポカーンと椿を見つめる。
「なんちゅう顔してんだよっ!」
と笑いながら空いてる片手で私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「綺麗になったよ。都。本当に。俺があの日、都の名前を見つけた時、都の姿を見つけた時、どんなけ嬉しかったかわかんねぇだろ。」
「き、気づいてたの?」
ぐちゃぐちゃにされた髪を整える。
突然、綺麗だなんて言われて真っ赤になった顔を隠すように。
「うん。式始まる前から。まぁ?誰かさんは全く気づいてないし、逃げるし、無視するし。10年以上片想いしてきた俺はもう、超ショックだったよねー。」
「………すみません。あっ!あの時のイヤホンと靴返してよっ!」
「やぁーだねっ!あれは最後の切り札だからね。」
「はぁ?なによそれ。私、イヤホンないと困るんですけどー!!」
わざと椿の耳元で大きい声で言ってやる。
嫌がらせのつもりだったけど失敗したかも。
椿に近づくと、フワッと椿の香水の香りがしてさらに私の鼓動を早めた。

