「もー本当にびっくりです!まさか、椿さんが現れるなんてっ!」
ランチをしに桜田と外に出たのはいいものの、私は全く箸が進まない。
「本当にね。なんでこんな事になるわけ?」
はぁー。とため息をつきながら、とうとう箸を置いてしまった私。
桜田はお水を一口飲むと、ぐっと前のめりになり、ひそひそと話す。
「ってゆーか、実際、センパイと椿さんって何があったんですか?」
私と椿に、『何が』あったか。
きっとそれは、他人からみたら実にくだらない事だろう。
それに、なんといっても私は29歳。
こんなことで動揺してるなんて客観的に見て恥ずかしいことだ。
「はぁ、まぁね………。なんというか、とにかく苦い苦い思い出、黒歴史なわけよ。」
「えーなんですか、それぇ。気になるー」
ゴメンね、桜田。
君に話すほど、大したことではないのです。

