「な、なにすんのよっ!!」



と言い終わると同時かそれより、少し前に止まったタクシーの車内に私はドンっと無理やり乗せられる。



椿は運転手にさっと、一万円札を渡すと、

「お願いします。」

と言ってドアを閉めた。



「ちょっ、ちょっと!!椿っ!!なんなのよっ!!」


タクシーの中から叫ぶも、椿は笑って手を降っているだけ。



「お客さん。ここ長く停まれないから。」


タクシーの運転手にそう言われて、自宅の住所を告げると、ゆっくりと動き出すタクシー。




「あっ!!イヤホンっ!!!」



椿を振り替えると、まだ手を降っている。


その手には、さっきまで履いていたはずの私の靴。



とっさに足元を見ると、靴は片方しかなかった。



「もー………嘘でしょ。」



これじゃ本当に、ガラスの靴じゃない。

残念だけど、もうしょうがない。



どうか童話のように、


椿が靴を片手に探しに来ませんように。