なおも、余裕そうに笑う椿に、もう我慢の限界になってきた。


桜田達も戸惑っているし。


「………すみません。明日朝から出張なのでこのへんで失礼します。」



席を立ち、桜田にだけ聞こえるように、『ゴメンね。』と呟くと、桜田は笑って『こちらこそ。すみませんでした。』と言ってくれた。




クロークで重たい引出物を受け取り、店の少し重いドアをギィッッと開ける。


夜空を見上げて、『ハァー。』と一回ため息をついたあと、鞄からイヤホンを取りだし、はめた。


別に音楽を聞く訳じゃないけど、こうしてると必要以上に話しかけられないし、勧誘とか無視しやすい。


コツコツ。


結婚式の為に買った、このいつもより少しヒールの高いハイヒールが視界に入り、なんだか少しだけ泣きそうになる。



このハイヒールを店で見つけた時、すごく胸がときめいた。
『あぁ、この靴だ。』って思って自然に手が伸びた。



それは、まるでシンデレラのガラスの靴のようにキラキラとしてみえて、私を素敵な世界へ連れていってくれるように思えた。