犬と猫


あたしを、知ってる…?



「あたしの何を知って…。」

「何も知らないよ。」



は?

「けど、君がたった1人の田嶋結依ってことは知ってるよ。田嶋さんは田嶋さんだよ。他に代わりはいない世界にたった1人の子だよ。」



「……っ!」

何がたった1人よ。

父さんからしたら、あたしなんて…。



「あんたに何がわかるの?どうせあんたもあたしのことを嫌って…。」

「田嶋さん、俺の話聞いてた?」


「聞いてたわよ。」

突然、何を言い出し…。



「俺は嫌わないよ。田嶋さんのこと好きだから。」


「好き、って理由だけで嫌わない理由にはならないから。」


掴んでいる腕を振り払い、屋上を後にした。