疑問に感じたのは、数日経ったときのこと。
相変わらず、菜子とは口を聞いていないけれど、他の女の子は話しかけてくれる。
挙句の果てに、「喧嘩中なんだってー? 早く仲直りしなよね!」なんて餞別のチョコレートをもらったりして、無視される気配など微塵がないのがおかしい気がした。
もしかして、誰にも何も打ち明けていないのだろうか。
それを確信したのは、菜子と仲のいい立花が、ぷんぷん怒って椅子に腰かけていたこと。
「菖蒲ちゃんっ、聞いてよ!」そう言って、菜子とのやりとりを声高らかに話していたときだった。
「アイツさあ、人がせっかく心配してやってんのにさあ、関係ないって怒りやがって! なんだよ、ったく……。あっ、菖蒲ちゃんに言うことじゃなかったかな。忘れて!」
と、焦ったように言って、口を尖らせていた。
何をしているんだろう、後悔の念が降り注いだ。
謝れば、一言ごめんと言えば、きっと許してくれるはずなのに。嫌われていたら、どうしよう。
あんたなんていらないと、言われてしまったらどうしよう。二の足を踏んでしまって、私は何もできないでいた。
それなのに、菜子はこうやって、私のできないことをやってのけるのが、嫌なのに、好きで好きでたまらない。
——本当に、菜子は、嫌になるほど綺麗な心を持っている。

