意外にも、その喋り方から人見知りかと思っていたのに、どうやらそうではないらしい。
幼馴染の菜子が「結構喋るよ、うるさいもん」と言うくらいだから、人並みに口を開くのだと思う。
彼のことが知りたくて、それとなく聞こうとしたけど、聞かなくとも「未蔓」の話はよく出てくる。あろうことか、親密さを窺わせるような二人のやりとりに、困惑さえした。
「つき合ってない」その言葉は、私が聞くまでもなく、他の女の子に聞かれているのを見たことがある。
初めは否定していたけれど、そのうち強く否定することもなくなった。けれどもつき合っている、そんな言葉を菜子の口から聞くまでは、なんとかこの黒い汚い嫉妬心を隠し通そうと思っていたのに。
バケツをひっくり返したような雨の日、雷の音が響く中、菜子は駆け足で帰路についていた。
雨が弱まるまで待っていようと、教室の窓から外をじっと眺めていたからすぐわかった。菜子の後を追いかけるように、一之瀬くんが雨の中を駆けて行ったのだ。
気だるそうな、省エネを決め込んでいそうなあの一之瀬くんが。
翌日、菜子と一之瀬くんの二人の噂が耳に入ってきた。
「駅でキスしてたらしい。タオルで隠してたの見たって」
他にも、濡れて透けた菜子のブラウスの胸元を、一之瀬くんがなぞっていたとか、ジャージを貸してさも嫉妬深い彼氏のようだったとか。
そんなことを聞いては、もうカップルの甘い雰囲気にしか思えない。

