初めは、お昼や移動教室のときに、誰かと一緒にいられれば、それでよかった。
一人になるのと一人でいるのは似でいるようで、全く違うことだ。私は、一人になりたくなかった。
しばらくすると、バイトを始めたと意気揚々と話していた。花に囲まれる日々は、思っていたよりずっと楽しくて、ブーケを作ってみたくなったとか。バイトの自分に任せてもらえることではないから、隙を見計らっては、店員さんの手つきを見ていると言っていた。
バイトのない日も、菜子はわりに早い時間に帰る。何の気なしに聞いてみると、母親がいないのだと話していた。
けれど、屈託のない笑顔で悲壮感など感じさせなかったし、まるで今が最高に楽しいと言わんばかりの口ぶりだった。
女子特有の、「誰にも言わないでね」「内緒だよ」そんな上辺だけの約束の言葉。そんな前ふりをしておきながら、自分に都合が悪くなれば、女子はペラペラ喋ってしまう。
けれど、菜子はそうじゃなかった。
別に内緒だよ、なんて言わなくても、二人の中でとどめていてくれる。場所をわきまえて、声を潜めて話してくれる。誰かと3人で話して、その中の1人がその場からいなくなっても、その子の悪口を言ったりしない。
……いつしか、そんな菜子の隣が心地よくて、この子なら、きっと信頼できる、そんなことを思っていた。

