「フジヤマ、あそこに見える道行って」
「坂の方? なんかあんの?」
「私の家」
「おぉー、家に入っちゃっていいの? やった、俺のこと家族に紹介してくれるんだ」
「紹介しないからっ。 ていうか、家の近くにある公園に行くの。 すっごく広くて駐車場もいっぱいあるから、そこでゆっくり話せるでしょ?」
「なーるほど。 じゃ、移動するなー」
その言葉のあと、フジヤマは車を再び発進させた。
海岸沿いの大通りから横道に入り、坂道を上っていく。
そうすると、大きな緑地公園が見えてきた。
……私の家はこのすぐ近くだけど、フジヤマには絶対に教えない。
教えたら、十中八九 家に突撃しそうだからね。
「へぇ、いい場所じゃん。 俺けっこー好きかも」
「よかった、私も好きなんだ。 あのね、あっちのベンチの方に行くと、海水浴場が見えるんだよっ」
「マジで? んじゃ降りるかっ」
「うんっ」
車を降りて、駐車場から少し離れたベンチへと向かう。
木で作られた柵の向こう側は崖になっていて、その遥か下の方に海水浴場が見える。
ここから見ても、やっぱり人、人、人。
今は15時半を回ったところだけど、まだまだ減る気配はない。
「あれだな、人がゴミのようだなっ」
「うわー、それ絶対言うと思った!!」
「そりゃあ一生に一度は言いたいセリフだし?」
「ふふっ…確かにねー」
かく言う私も、昔こっそり言ったことがある。
もちろん周りに誰も居ないことを確認し、なおかつ小声でだけどね。



