「この辺にレンタカー屋ない?」

「し、知らないよ滅多に来ない地域だしっ。 ていうかなにっ……車で私を拉致る気っ……!?」

「デートだって言ってるじゃん。 検索するからちょっと待ってなー」



……いやいやいや、なんで勝手に話が進んでるんだっ。



「……フジヤマ。 大声出して警察に突き出すよ?」

「サクラはそんなことしない。 つーか出来ないだろ? な、人見知りのお嬢ちゃん?」

「うっ……確かに、そうだけど……」


「大丈夫だって、ちゃんと送ってやるから。 よっしゃ、割りと近くに店あるから車借りてこようっ」



相変わらずの笑顔で言ったフジヤマは、有無を言わさず歩き出した。

うぅ……フジヤマ、強引……。



「別に俺、なんもしねぇから安心しとけ?」

「……」

「つーかさ、顔も本名もバレてんのにサクラを傷つけるようなことするわけねぇじゃん。 あ、俺の免許証コピーして持っとく? 俺がなんかしたらそれ警察に提出すりゃオッケーだよ?」



ポケットを漁って出した運転免許証。

それを私に手渡しながら、フジヤマは笑う。



「マジでなんもしない。 普通にドライブするだけだよ」

「……わかった、信じる」

「帰りはちゃんと送ってやるから安心しとけ?」


「ん……よろしくお願いします」

「おう、フジヤマさんにお任せあれっ」



いつもと全く変わらない口調で言うフジヤマ。

そんな彼を見ていたら、私も控えめだけど笑うことが出来た。