「ユ、ユージ……?」

「……泣きそうな顔してるウメちゃんに、俺は何が出来るかなって考えて……成り行き上こうなりました。 こういうの初めてなんで、加減がわかりません、ゴメンナサイ」

「あっ……う、うんっ……だい、じょうぶ…デス……」



ドキン、ドキン、ドキン。

自分の鼓動が速くなるのを感じながら、同時に、ユージの胸の音も感じる。

……私と同じくらい速い。

ううん、それ以上?


ユージは私よりもドキドキしてるみたい。

そんな状態でも、しっかりと私を抱き締めてくれている。


……嬉しいな。

とっても、幸せだな……。



「……ありがとね。 私、本当にもう大丈夫だよ」



そっと、ユージの体を抱き締め返す。

それから、至近距離で見つめ合い……お互いに微笑んでから体を離した。



「じゃあ、今度こそ行くね」

「うん」



そう言葉を交わしながら、玄関の外に出る。

そして、門のところでユージに手を振った。



「帰り道、迷わないようにね?」

「大丈夫だよ、俺には地図アプリがついてるから」

「ふふっ…じゃあ安心だ」


「うん」



クスクスと笑い合いながら、お互いに小さく手を振った。


今度こそ、ちゃんと笑顔でここに居る。

泣きそうな顔なんてしていない。


私は、自然に微笑みながらユージへと手を振っていた。