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  俺がYUKIという名で初めてチャットした

  時、『もしかして俺の知ってるユキ?』

  って、フジヤマが言ったんだ。

  その言葉で思ったよ、やっぱりフジヤマは

  ユキを待っていたんだ。 って。


  俺は6年前の二人を知ってたけど、

  何も言わないまま『初めましてだよ』って

  答えた。


  ……でもあの時、俺は選択を誤った。


  俺がユキの真似をしたせいで、フジヤマを

  凄く傷つけしまったと思う。

  フジヤマに気があるフリをして、オフ会

  にも行くと言って、男だって言えず、

  ネカマしてた理由も言ってない。


  YUKIという名で初めて話した時に、

  『6年前を知ってるよ』と言っていれば

  フジヤマを傷つけることはなかった。


  俺は俺のままフジヤマと話し、昔を

  思い出しながら一緒に笑い合う。

  それでもよかったんじゃないか……と、

  後悔してるんだ。


  だけど……多分 俺はこの先もずっと、

  フジヤマには何も言わないまま過ごして

  いくと思う。


  本当は全部言いたいけど、言ったからって

  どうにかなるようなものでもないしね。


  って、急にこんな話をしちゃってごめん。

  何言ってんだコイツ、って思ったよね。

  うん、自分でも何言ってるんだろ?って

  思ってる。 ほんとごめん。


  でも俺、ユキのことをサクラにも知って

  もらいたいって思ったんだ。

  俺とサクラは、ずっと『女の子同士』で

  喋ってきただろ?


  ……YUKIのモデルはユキ。

  ユキが居たからこそ、俺はYUKIなんだ。

  それを覚えていて欲しい。

  ユキを知らなくても、サクラが喋ってきた

  YUKIはユキなんだよ。



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