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  サクラへ


  突然手紙なんて書いてごめん。

  だけど、どうしても話しておきたいことが

  あったんだ。

  リアルではきっと言えてないと思うから、

  ここに記すよ。


  俺は6年前、フジヤマに会っているんだ。

  もちろん『チャットの中で』だけどね。


  俺は外で遊ぶより家でゲームをしたり本を

  読んだりする方が好きで、今と同じように

  家にこもって過ごすことが多かった。
  

  そんな時に『チャット』を知って、

  俺は当たり前のようにハマったんだ。


  最初は他の人の書き込みを見てただけ。

  いわゆる、ロム専ってやつだね。

  他の人の書き込みを見て、面白い話が

  出たら一人でこっそり笑ってた。


  でも、やっぱり見てるだけじゃつまらなく

  なってくるんだよね。

  だから俺はみんなの居る場所に入るように

  なって、子供ながらに色々考えて、色々な

  話で一緒に笑うようになっていた。


  リアルの友達なんてほとんど居なかった

  けど、チャットの中にはたくさんの

  友達が居た。ほとんどみんな年上だった

  けど、それでも毎日が凄く凄く

  楽しかったんだ。


  そうやってチャットしてる時に、

  フジヤマに出会ったんだよ。


  彼は今と同じで、とても面白い人だった。

  フジヤマがチャットルームに入ってくる

  と、どんどん人が集まってくるんだ。


  6年前は今よりもチャットする人が格段に

  多かったから、フジヤマと話したい人も

  いっぱい居て…1つの部屋に20人とか

  30人とかは当たり前。


  当然 話題もグチャグチャだったけど、

  それはそれで見てて面白かったよ。

  一生懸命に話題を拾って応えてた

  フジヤマは大変そうだったけどね。


  でも、本当に楽しい時間だったんだ。

  だから俺は、あの頃のことを……

  フジヤマと過ごした日々を、

  決して忘れない。


  たとえフジヤマが忘れていたとしても、

  俺は永遠に忘れない。



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