「…ごめんね」 「え…?」 男はあたしを離すと、悲しい顔で言った。 「俺の名前は、羽達 椿。いきなり、抱き締めて…その、悪かったよ」 「い、いえ…大丈夫、です」 「じゃあ」 「あ、はい。さよなら」 「うん、さよな……バイバイ。……………聖那」 「え?」 彼は静かに背を向け、去ってしまった。 聖那って、よんだ? なんだか…落ち着いた。 彼の名前を聞いて、名前を呼ばれて、不思議と落ち着いた。