ーside尊ー


遥香の、退院が決まり安心したけど遥香の様子を見ると、退院を決めてよかったのか不安にはなっていた。


もし、心臓の発作が起きてその時の対応が遅れた時の事を考えると、正直退院をしない方がいいのかもしれない。


それでも、俺は遥香に今にしかできないことを楽しんでもらいたかった。


皆は、卒業旅行とかしているはず。



遥香には、普通の18歳の女の子の様に楽しんでもらいたい。


せっかく、色んなことを乗り越えてきたんだから。



だから、もしものことがあったら俺が全力で遥香のことを助ける。


ようやく、そう決心できたのは今だった。



退院できるって聞いて、嬉しそうだったしな。


遥香を病院からも病気からも、縛り付けたくない。



それが、本音だった。


「なぁ、遥香?」


「なに?」


「退院したら何がしたい?」


こんな感じの質問を前にもしたような気はした。


でも、今の遥香のやりたいことを聞きたい。



「どうしてそんなこと聞くの?」


遥香は、不安な表情で聞いてきた。


「いや、遥香は不安にならなくていいんだよ。ごめんな。聞き方が悪かった。ずっと病院に入院してたんだから、きっと我慢してたことたくさんあるだろ?だから、遥香も外に出たら何がしたいのかなって。」



それを聞いた遥香は、安心していた。



「んー…やりたいことか…」



遥香はしばらく黙り込んでしまった。



そんな難しく考えなくていいのにな。


だけど、こういう1面を見せる遥香が可愛くて仕方ない。


こういうのって、彼氏ばかって言うのかな。


遥香が大好きで、愛おしくてたまらない。


そばにいてくれるだけで、幸せになれる。


「ちょっと!」



そんなことを考えていたら、遥香を抱きしめたくなって遥香を抱き寄せていた。



「尊?」



「お前、可愛すぎ。」



「尊?前に遊園地行きたいって言ったの覚えてる?」



「あぁ。覚えてるよ。」


「行きたい。遊園地。」


「分かった。遊園地行こうか。」


「本当?いいの?」


「あぁ。走らなければいいよ。」


「やった!」


「あ、でもジェットコースターは無理かもしれないな…。」


「…分かってるよ。乗らないから大丈夫。」


少しだけ寂しそうに俯いた遥香を再び抱きしめた。


「治ったら、乗ろうな?」


「え?」


「本当は、乗りたいんだろ?」


「うん。」


「大丈夫。治ったら乗れるから。」


「頑張るよ、私。絶対治す!」


「頑張ろうな!」


前向きになってくれた遥香の成長が見られて嬉しい。


2人で病気も過去も乗り越えていく。


それができる関係が、本当の幸せだと思う。


俺にとっても、遥香にとっても。