ーside遥香ー

私は、なんとなく想像はしていた。


心臓に何かあるってことは、検査結果を尊から聞かなくても分かった。



だけど…



受け止めきれない気持ちが大きい。



喘息でさえ、呼吸が苦しくて死ぬ恐怖に襲われていた。




それが、心臓となると…




そう考えると…怖い。



どうして私ばかりなの?


私は、幸せになることを許されていないから?


そのループだった。



それでも私は、心のどこかで幸せになりたいと思ったし、これからも生きていきたいって思った。



だから、治療を頑張らないといけない。




「尊…取り乱してごめんね。私、治療頑張る。




尊がそばにいてくれるなら、頑張れる。



「大丈夫、俺が遥香の病気を治してみせるから。俺を信じて。」



十分すぎるほどの、嬉しい言葉。


私には、もったいないくらいだよ。



「遥香、とりあえず今日はゆっくり休もう。」




「うん。」




「俺もそばにいるから。」




「ありがとう。」



私は、尊の温もりに包まれて眠っていた。



自分でも、この後のことが怖い。



喘息の発作が起きたら、心臓が止まりそうで怖かった。



尊には、その事は言えなかった。



「遥香、発作が起きたとしても心臓に負担がかからないように対処していくから大丈夫だよ。」


尊には、何も言わなくても分かっちゃうよね。


私の気持ちを、いつでも汲み取ってくれる。


「尊…怖い。」


私は、思っていたことがつい言葉に出してしまった。


「うん、そうだよな…。」


尊は、ずっと私を抱きしめて離そうとはしなかった。


「遥香、20歳になったら移植も受けられる。だから、治らない可能性は低い。絶対治るから。怖がらなくていいよ。無理に、強くなれとかは言わない。遥香の辛さは遥香にしか分からない。でもな、俺は不安を感じるならそばでこうして少しでも安心できるうに、遥香のことを支えていくから。これかもずっと、今までのように。」



尊の、力強い言葉に私は少しだけほっとした。


『移植』



その言葉は、怖かったけど希望でもある。



私が治る、唯一の手段な気がした。


それに…


私の不安は、尊が汲み取ってくれる。



そのことだけで、私は十分安心できるよ。