「遥香、仕事に行くけど何かあったらすぐに連絡してね。」

「分かった。」

「それじゃあ、戸締りちゃんと忘れずにしてね。あと、学校行く時も気をつけるんだよ?」

「大丈夫。」

「行ってきます。」

「行ってらっしゃい!」

尊を送り出してから私も学校に向かう準備をした。

今日は休みだけど、合格したらちゃんと校長と担任に報告しないといけない。

携帯の着信が鳴る。

宛先は千尋からだった。

「はい。」

「あ、遥香?何時の電車に乗る?」

「んー、10時の電車に乗るよ。」

「分かった。じゃあ、駅でね。」

「うん。」

千尋の電話を切ってから、駅に向かった。

「遥香先輩?」

後ろから男性の声が聞こえて振り返った。

誰だろう、この人。

「あ、いきなりすみません。あの、2年の宮森日向です。」

「あー、次期生徒会長さん。」

「はい。今日は学校ですか?」

「うん。大学の結果を報告しに行くの。」

「そうなんですね。いやー、噂で聞いていた通りのお人ですね。」

「え?」

「本物は美人ですね。舞台でしか見たことなかったので。」

「すみません、私友達駅で待たせてるので失礼します。」

年下でも怖い。

「あ、すみません。」

日向君はそう言うと走って帰ってしまった。


「遥香、行こう!」

「あ、うん!」

駅に着くと千尋がいた。

それから、学校に向かってすぐに校長と遭遇した。

「おはようございます。」

「おはよう。」

それからしばらくして大翔と合流した。

「よし、みんな揃ったね。」

校長がそう言うと、校長室へ通してくれた。

「まず、合格おめでとうございます。」

「「「ありがとうございます。」」」

「それから、白石さん。トップ合格おめでとう。大学でもトップだなんてすごいね。」

「あ、ありがとうございます。」

「ちょっと、遥香。それ聞いてないよ?」

「だって、そんなこという必要ないでしょ?みんなで合格できたんだから。」

「遥香。」

「3人は14年も一緒だよね。それってすごいことですよ。」

「これからも、3人で仲良くやっていこうね。」

大翔は、私達よりも考えが大人で私達の保護者みたいだった。

「うん。」

「あ、校長。」

急に態度が変わった千尋。


「え、なに?」

「遥香に、謝ることありますよね?」

え?謝ること?

「あぁ。そうだったね。白石さん、無理に1番上の大学を勧めてごめんね。遥香ちゃんの可能性と未来を切り開いてほしかったんだ。でも、自分の行きたい大学じゃないと、それも叶わないよね。だから、これからは合格した大学で未来を切り開いて行ってください。」

なんだ。
そんなことか。

「嬉しいお言葉、ありがとうございます。」

「それから、ずっと気になっていた事があるんだけど、白石さんが前に言ってた見つけたいことってなんだったの?」

「私、目標としている人がいるんです。私もその人みたいに、身体と心が傷ついた人達を助けていきたいんです。身体だけじゃなく、心の治療もしていきたい。その人が大学で学んだことを、私も同じ様に学んで、私なりのやり方を見つけたいんです。」

それが、私の見つけたいこと。
尊がいてくれたから、ここまでこれた。

どん底の人生から、救い出してくれた。

私が夢を見つけられたのも尊のおかげ。

でも、尊には恥ずかしくて言えないけど。

私も、尊みたいな医者になりたい。

人を思いやり、身体の治療も丁寧な医者になってみせる。

医学部の勉強は、大変なことが多いのかもしれない。

それでも、夢を叶えるためなら頑張れる。

「白石さんなら、きっとなれますよ。誰よりも、入院している患者さんの気持ちが分かると思います。頑張って下さい。」

「はい。ありがとうございます。」

それから、私達は校長室から出た。