ーside遥香ー

「尊…?」

てか、今何時?

時計を見ると夜の6時だった。

「あ、遥香。起きたか。」

「ずっと抱きしめててくれたの?」

「うん。遥香が不安そうだったからな。それより、苦しくない?」

「もう平気。」

「本当か?」

「うん。本当に。」

「念のために診察するな。」

尊は逃げようとする私の腕を掴み手っ取り早く診察を始めた。

「……。」

真剣な表情で私の胸の音を聞く尊。

この表情は、結構好きだったりする。

「喘鳴はないな。心臓の鼓動早かったけど大丈夫か?」

その原因が尊だってことを気づいていないところは鈍感だよね。

「尊のせい。」

「え!俺!?」

「うん。」

私はそう言うとゆっくり立ち上がり尊から離れようとしたけど、

「そんなこと言ってると、逃がさないよ?」

再び、腕の中へ引きずり込まれた。

「耳元で言わないでよ。」

「遥香、頭痛いだろ?」

「え?」

「薬飲みな。」

「ありがとう。」

尊から水と薬を渡されて飲んだ。

「お仕置きは家に帰ったらするから。」

「え!?何の?」

「秘密。」

何かを企んでいる意味深な笑みをする尊。

「お腹空いたか?」

「うん。お腹空いた。」

「リビング行こうか。」

私は尊に肩を支えられながらリビングに向かった。

「遥香ちゃん、大丈夫?」

「はい、大丈夫です!」

「よかった。夕飯できたから食べよう。」

「遥香ちゃんのアレルギーはちゃんと尊さんから聞いたから安心してお食べ。」

私には、アレルギーがある。

エビと卵が食べられない。

昔、その2つを食べてアナフィラキシーショックを引き起こして、生死をさまよったことがある。

あの時は、山城先生にすごく助けられた。

「ありがとうございます。」

「「「いただきます。」」」

「「いただきます。」」

私はゆっくりと箸を勧めた。

「遥香、無理して食べなくていいから。食べられるだけにしておきな。」

「うん。」

私があまり食べれないことを知ってる尊。
それに、気を使って無理して食べることを予想していた。

人の半分の量しか食べられないから、全部完食することはさすがに辛い。

それから、夕飯を食べ終えた私は初めての家族団らんの時間を過ごした。

温かくて穏やかで、今までに味わったことのない感覚で戸惑いもあったけど、尊がそばにいてくれて素直に受け入れることができた。

ずっとテレビドラマを見ていると、段々と眠くなってきた。

「遥香、眠いか?」

「え?」

「あら。温かいわね。今日は疲れただろうからもう寝なさい。」

おばあちゃんが私の体に触れ、体温が上がってきていることを確認してから言った。

「じゃあ、お先に失礼します。」

「はーい。あ、尊さんと遥香ちゃん、明日の朝ご飯はパンの方がいいかな?」

「どっちでも大丈夫です。」

「分かった。それじゃあ、おやすみ。」
「「おやすみなさい。」」

部屋に向かい、私はそのままベットに身を投げ捨てた。

「遥香、ちゃんと毛布と掛け布団かけな。」

「体が重い…」

「ちょっとごめんな。」

尊のおでこに当てる手が冷たくて気持ちが良かった。

「少し温かいな。今日はちゃんと体冷やさないように温かい格好で寝な。」

「分かった。」

私は掛け布団と毛布をかけ眠りに着いた。