ーside尊ー

夏樹さん達には、少しだけ申し訳ない気持ちになったけど、遥香の体調を優先させ先に帰宅した。

冷たい空気と、遥香が上げた線香の煙が引き金となり、喘鳴が聞こえてきた。

聴診器を当てなくてもわかる。

腕の中でぐっすり眠る小さい姿。

あれだけ体力使ったんだもんな。
疲れたよな。

色んなことに向き合えるようになったのも、遥香の気持ちに余裕が出てきたってことだよな。

今は、まだ父親のお墓参りで余裕はないと思うけど。

だけど、少しずつ気持ちに余裕が出てきたのはいいことだ。

初めて会った時の遥香は、今を生きているこもで精一杯だった。

少しでも、幸せに近づいてくれてるならいいけど。

まぁ、まだまだこれからだよな。

「遥香。ちょっと起きれるか?」

遥香の苦しそうな表情を見ていると起こさずにはいられなかった。

「え…?ん!ゲホゲホッ…」

本格的な発作が始まってしまった。
俺は遥香に吸入器を口に運び背中をさすった。

いつも通り、深呼吸をするように促した。

30分ほどして発作は落ち着いたが、遥香はぐったりしている。

「遥香、疲れただろうから少し横になりな。」

「…分かった。」

「発作が怖いなら、ずっとこうしててあげるから。」

俺は遥香を優しく抱きしめた。