ーside尊ー

遥香は、今年も誕生日を祝うことを拒否した。

でも、やっぱり誕生日は祝いたい。

だって、遥香が生まれた日でその日は俺にとっても特別な日だから。

そんな日を、憂鬱に過ごして欲しくない。

俺が遥香に出会えたのはその日があったから。

俺に出来る事は何かないのかな…。

遥香がお風呂に入った隙に、名前を検索してみた。

確か、遥香の父親には姉がいてその人の名前は前に遥香の母親から聞いたことがあった。

でも、遥香は顔も名前も知らないんだよな。

1度だって会ったことないから。

検索してみると、検索結果は案外少なくてそれらしい人が見つかった。

やっぱり。

遥香の誕生日の日は、父親の命日だ。

この人と連絡は取れないのかな…。

つぶやきを見ることは出来ても、連絡をとるとなるとやっぱり難しい。

俺はずっとその人SNSを見ていた。

はぁ…。
やっぱり、いい手段は見つからないか。

俺はふと時計を見た。

そういえば、遥香遅くないか?

気づけばお風呂に行ってから30分は経っていた。

もう出てきてもおかしくない。

お風呂場に様子見に行くか。

お風呂のドアをノックすると返事もなかった。
だよな。電気は消えてるから。

部屋かな?

でも、いつもはリビングに来るはず。

俺は遥香の部屋のドアをノックした。

返事がない。

様子がおかしい。

「遥香?開けるよ?」

「な、なに?」

やっと聞こえてきた声。
安心した…。

「具合でも悪いか?」

「……平気です。」

何で敬語なんだ?

「遥香、開けていい?」

「…私もう眠いから寝ます。」

「あぁ…分かった。」

おかしい。
遥香の様子がおかしい。

どうしたんだよ。

原因が分からないままで、気になったけど俺はあまり遥香を刺激しないようにした。

あまり問い詰めると余計に心を閉ざしてしまうから。

最近はやっと、自分を見せてくれるようになった遥香。

そんな遥香が俺は大好きで仕方ない。

遥香の温もりはたまらなく愛おしいと思う。

だから、心配だ。

あんなよそよそしい様子、あの日以来だったから。

初めて出会った頃に戻りかけているような気がする。

誕生日も近いし、色々思い悩んでるのか?

やっぱり、あまり触れて欲しくはないか?

でも、遥香はもうそんなに弱くない。

母親のことを乗り越えられたなら、父親の死とも向き合えるはずだから。

俺は信じている。
遥香がちゃんと乗り越えられることを。