朝礼後の授業にも身が入らず注意を受けることもありながら昼休みに入っていた。

「翼が珍しいね」

「実を言うと今日寝坊して電車一本乗り過ごしてラッシュとかぶちゃったんだ」

「そんなに大変なんだ私バスだからなー」

「バスでも柚希も電車に乗るときは注意した方がいいよ」

危機感がないのか私の様子が可笑しいのかクスクスと笑っていた。

「もう、笑ってないでご飯食べよ!時間なくなっても知らないよ」

話を反らすべく言ったものの、もう柚希の思考は違うところにいっていた。

「でも私たちもう高2になったんだし早く恋人見つけなきゃ、今年もぼっちは嫌だし頑張らないとだよ!」

「確かに柚希は可愛いから大丈夫だよでももうちょっと落ち着いたほうがいいかも」

「えー翼ひどいなー逆に翼はどうなの彼氏つくらないの?」

「私は相手がみつからないからなー」

そう、口では言ったが現実そうではない。まだそこまでは克復できていないあの出来事からずっと……

その出来事を友達である柚希にも言ったことがないし、知っているのは私の家族ぐらいだと思う。

いつかは彼氏をつくり結婚して家族を作っていきたいとは思うものの人間そうはいかないし、朝の出来事もありますます理想から遠ざかっているような気さえする。

「翼…どうしたの顔色悪いよ?」

「えっ大丈夫ちょと考え事してただけ!」

ならいいけど、と柚希も疑いながらもそれ以上は何も言うことはしなかった。