学校に着くのがこんなに長く感じたこともなく、こうも学校前の駅に着いて嬉しかった事もなかった。着いた頃には精神的に疲れはて机に倒れこむ様にして座る。

「おはよーてっ翼大丈夫朝からお疲れ?」

突っ伏した顔をあげるとそこには髪を可愛らしく三つ編みにした女子生徒の姿が、

「大丈夫それより柚希が天使に見える」

朝の出来事で疲労していたが元気が出た。

柚希は高校に入ってからの友達で容姿も中身もよく高一の時初めて声を掛けてくれたのも柚希であり私にはもったいない友達。

私はと言うと見た目は地味で目立つようなことは避け存在感もなく過ごしている。

「本当に?なんかあったらいってね」

柚希の気持ちは有りがたいのだがさすがに朝電車で痴漢にあったとは言ない。柚希がバカにするとは思えないし逆に心配してくれると思うから言えない。

何より朝の出来事は忘れたかったあの痴漢の手の感触を………

「うん、ありがとう」

柚希が自分の席に戻るのを見届け窓の外に目をやる新入生を迎える前に仕事を終えた桜の木は日光が照らし疲れた私には眩しくもあり綺麗にも見えた。

柚希には大丈夫だと言いつつも朝の出来事が頭をよぎるあの助けてくれた人が誰だったのかあの手も痴漢した男性とは違う男の人の手であったことだけは覚えていた。

「おい、遊木!朝礼始まるぞ!」

いつの間にか来ていた先生に呼ばれ前を見るとすでに皆が席につき朝礼が始まるところだった。